風呂敷と言えばこの柄
風呂敷の定番のイラストと言えば、唐草模様が挙げられます。
テレビのバラエティ番組で、緑地に白い唐草の模様が描かれている風呂敷に泥棒が盗品を包んで持っていく光景を思い浮かべる方も多いでしょう。
唐草模様は本来は縁起の良い模様とされる吉祥文様の一種で、あらゆる方向に成長していくことから長寿祈願や、子孫が増えその家が栄えるということを願い、嫁入り道具を包むものとして利用されていました。
長寿を表す亀甲文様、富貴を表す七宝柄や、発展を表す扇の柄、健康の象徴となる麻の葉の模様等、日本独特の美意識から作られた吉祥文様から多くのイラストが使われてきました。また、風呂敷にその家ごとに伝わる家紋を入れることも多いです。
現在では、使われるイラストも多様化し着物の柄でお馴染みの矢羽や梅柄、ひょうたんやトンボなどの可愛らしい和柄、手ぬぐいの柄でお馴染みの豆絞り等の細かい模様が入った柄もあります。
また、洋服に合わせても使いやすいように洋風の大きい花柄や、大胆な色使いのドットやストライプのような柄が入っているものもデザインされるようになってきました。自由度が上がってきたデザインを、風呂敷で楽しむというのも粋な物ですね。
泥棒=唐草模様のイメージはどこから生まれたのか?
ではなぜ唐草模様の風呂敷が、泥棒のイメージとして定着したのでしょうか。
吉祥紋をモチーフにした風呂敷は江戸時代に誕生しましたが、縁起のいいものを日用品の風呂敷に使われたのです。その後唐草模様の風呂敷は徐々に普及していきますが、明治から昭和になると、大量に生産されるようになりました。
「縁起物」ということで多くの人に受け入れられたのもありますが、生産しやすいことも影響しています。
風呂敷は、幅約35~40cmx長さ約12mの反物をつなぎ合わせて作られます。唐草模様の場合、つなぎ目がわかりにくいことが、生産しやすさにつながったのです。どこの家庭にも必ず一枚は置いてあるほど普及していれば、泥棒に使われる可能性が高くなります。
泥棒は大概手ぶらで民家に侵入し、盗品を運ぶ時、その家にある、大判の唐草模様の風呂敷を使いました。
そうした泥棒のイメージが漫画やイラストとして描かれ、多くの人に浸透していったわけですね。ですが、面白いことに浮世絵には唐草模様の風呂敷をかついだ泥棒の姿は描かれていません。
風呂敷は江戸時代に誕生したものの、大量生産されてはいなかったので、そうしたイメージは定着していなかったと考えられます。
縁起の良い唐草模様の風呂敷がなぜ泥棒のイメージになってしまったのか、それを紐解くカギは、大量生産による普及にありました。